空間情報システム #15
空間情報は誰のものか?空間情報はどこへ行くのか?
2026年7月25日
今日の問い
- 自転車観光コースを、どう見せるか?
- Google Earth/Street View/Mapillary/PLATEAU……何が使えて、何が使えないのか
- その裏にある「問い」
- 地理空間データは誰のものか
- 地理空間データは何のためにあるのか
- 地理空間データは誰がどう整備すべきか
ケーススタディ:ある教員の浅はかな考え
- 実際に観光コースを自転車で走るのは無理でも、空間情報を使って「走った気分」にはなれるのでは?
- Google Earth Pro / Studioで、コースをなぞる動画を作れるのでは?
- ストリービューの静止画像をつなげて、動画にできるのでは?
- 「成果をプレゼンでどう見せるか」を考えるところから、地理空間データの構造・課題が見えてきた。
Google Earth Studio / Pro
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Google Earth Studio / Pro
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Google Earth Studio / Pro
- 上空からのビューであれば、それなりに3Dっぽい画像が得られる
- 地表レベルでの3Dモデルは、限られた地域・都市のみ
- PLATEAUに期待(後述)
Google Street View
- スクレイピング禁止:サービス外での利用を目的とした書き出し・抽出は禁止。具体的にストリートビュー画像の大量ダウンロードが明示的に禁止事例として挙げられている
- キャッシュ禁止:取得した画像を保存・キャッシュすることは、規約で明示的に許可された場合を除き不可
- 派生コンテンツ作成の禁止:Google Mapsコンテンツを基にした新たなコンテンツの作成そのものが禁止されている
Mapillary
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Mapillary
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見せ方の選択肢を整理する
- Google Earth Studio / Pro:写真測量3D、地方部は精度が粗い
- Street View 静止画の連結:利用規約上グレー〜NGの可能性が高い
- Mapillary:オープンライセンスの街路画像、ただしカバレッジに偏り
データの所有権から
| 2D地図 |
Google Maps |
OpenStreetMap |
地理院地図 |
| 街路写真 |
Google Street View |
Mapillary |
|
| 3D都市モデル |
Google Earth Pro |
|
PLATEAU |
- Googleなどの営利企業が便利なサービスを開発
- 市民参加型のVGI(Volunteered Geographic Information:ボランタリー地理情報)による補完
- 公共部門は、測量結果などをもとに成果を公開(国内限定)
歴史:地図は国家機密だった
- 1899年 要塞地帯法:要塞周辺の測量・撮影・模写を禁止
- 1937年 東京・横浜・大阪・神戸近傍の地図の頒布を禁止
- 市販地図でも、軍事施設は白抜き、幹線道路と河川だけが残された
- 測量そのものが「軍事行為」だった時代
非軍事化とGPSの解放
- GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)
- 1970年代に米国防総省の軍事プロジェクトとして開始
- 1993年から民間利用開始
- 意図的な精度劣化(SA:Selective Availability)→100m程度の誤差
- 2000年にSAが解除
- 民生GPSの誤差が、100m規模から10m以下へ
- 個人が正確な位置情報を扱える時代の始まり
VGIの時代へ
ボランタリー地理情報
- 2004年OpenStreetMap 創設
- 2007年〜Google Street View
- 利用規約によって、私的利用が強く制限される
- MapillaryなどのVGIの登場(CCライセンス)
なぜVGIだけでは足りないのか
- 佐賀のコースでMapillaryのカバー率を実測:61.6%
- 欠損は散発的ではなく、特定区間に集中
- 撮影は「善意と行動」に依存し、観光地・人通りの多い場所に偏る
- 生活道路などは取り残される傾向
- Googleは資金力を活かし情報を収集し、ビジネスモデルを構築
なぜVGIだけでは足りないのか
とはいえVGIにしかできないことも
- 更新速度:行政の測量サイクルでは追いつかない変化を捉える
- 粒度:公式統計には乗らないローカルナレッジ
- 参加の価値:地域への当事者性を生むコモンズとしての側面
公共の役割:PLATEAU
- 国土交通省主導、3D都市モデルのオープンデータ化
- 2025年度末時点で329都市で整備済み
- 防災・カーボンニュートラルなど社会課題への活用を志向
GeoAI × MCP:今、起きていること
- MCP(Model Context Protocol)
- LLMが外部のデータ・ツールを呼び出すための共通規格
- Anthropicが提唱、OpenAIやGoogle DeepMindにも採用が拡大
- QGIS MCP:自然言語でGISソフトを操作する実装
実例:国交省 地理空間MCP Server
- 「地理空間MCP Server」(α版)を国交省自身がGitHubで公開
- 不動産情報ライブラリの各種データを、AIが自然言語で活用可能に
- 明治の要塞地帯法から、令和のMCP Serverへ
- 国家の姿勢は「秘匿」から「開放」へ、大きく転換してきた
まとめ:空間データを階層で捉える
| 測地基準・座標系 |
測量の土台 |
公共 |
| 基盤地物データ |
建物・道路・行政界 |
公共 |
| 動的・経験的コンテンツ |
街路景観・POI・混雑 |
VGI/民間 |
| AI活用 |
GeoAI・MCPによる分析 |
公共+民間+市民 |
- 空間情報は公共財的な性格を持つが…
- 測量・撮影という”労働”が投入された瞬間、情報財としての排除可能性が生まれる(企業はこの排除可能性を強化することで収益化)
- VGI・公共は、この排除可能性をあえて解除する側
まとめ:対立ではなく役割分担
- 土台(測地基準・基盤地物)は公共が担う
- 表層(動的コンテンツ)はVGIが厚みを加える
- 接続規格(MCPなど)も、公共が音頭を取る価値がある
- 「空間データはインフラ」という直感は、土台の層において正しい
- 同時に、これからの時代もVGIは不可欠であり続ける
レポート課題
- あなたが暮らす地域の地理データは、誰が整備すべきか
- 公共・民間・VGI・AIエージェント、それぞれの役割は何か
- これからの空間情報のあり方を、考えてみよう
- 締切:2026年7月31日(金)23時55分
- 提出先:LiveCampus
- 様式・分量:自由