佐賀の暮らしはどう変わる?

「移動」から読み解く地域の未来

田村一軌

佐賀大学経済学部

2026-10-13

オープニング

自己紹介

  • 所属:佐賀大学経済学部
  • 専門:都市解析、地理情報システム
  • 居住歴:愛媛県松山市→茨城県つくば市→東京都国分寺市→福岡県福岡市→福岡県北九州市→福岡県久留米市→現在に至る

今日の進め方

  • 70分ほどスライドを使ってお話ししたあと、15分ほど質疑応答の時間を設けます。
  • お話の途中でときどき皆さんに質問しますので、挙手で答えてください。
  • 練習問題「今日はバスで来た方?」

昔と今

Q1:これはいつの写真でしょう?

(出所)国土地理院撮影の航空写真を加工

答え:1960年代

(出所)国土地理院撮影の航空写真を加工

まちのかたちは、人の移動で変わってきた

  • まちの歴史は、人の暮らしの歴史
  • その時代のまちの「かたち」を形作るのが「ひと」
  • 都市は人々の活動の場(インフラ)であると同時に、人々の活動(アクティビティ)そのもの
    • 都市が移動を支え、移動が都市を形成する

一生の移動と毎日の移動

  • 2つの移動
    • 一生の移動:進学・就職・転職・定年後の引っ越し
    • 毎日の移動:通勤・買い物・通院

人口の移り変わり

Q2:佐賀県の人口が一番多かったのはいつ頃?

  • A. 1950年代
  • B. 1980年代
  • C. 2000年代

答え

日本の人口推移

生まれる人と亡くなる人

人口ピラミッドの変化

一生の移動

高度成長期の大移動

Q3:お子さん・お孫さんが県外にいる方?

  • 福岡の方
  • 東京・関西の方

答え合わせ:佐賀県の転出先

答え合わせ:佐賀県の転出先(外国人を含む)

長崎県の転入超過数

福岡県の転入超過数

九州→福岡→東京

  • 九州各県から福岡県へ、福岡県から東京圏へ
  • 日本の中心都市「東京」へ、地方から人が集まる
    • 九州の中心都市「福岡」へ、九州各県から人が集まる
  • 成長産業が集中する都市への人口集積は、
    • 地域の経済成長を促す
    • 地方の人口減少・高齢化を加速させる
  • 「都市」か「地方」かという二者択一ではなく、都市と地方の関係の中で、地域の未来を考える必要がある

佐賀県内各市の転入超過数

県内・市内の分布

日本の人口重心と「日本まん真ん中センター」

写真:K「Nihon Mannaka Center.JPG」Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)

  • 人口重心:日本中の人が同じ重さだとして、日本全体がつり合う点(国勢調査ごとに統計局が計算)。
    • 人口分布の「平均点」
  • 1995年(平成7年)の日本の人口重心が岐阜県美並村(現在の郡上市)にあったことを記念して、1997年に建設された(総工費22億円)。
  • その後、日本の人口重心は東へ移動…

日本の人口重心の推移(1965〜2020)

(出所)総務省(2023)「我が国の人口重心-令和2年国勢調査結果から-」統計トピックスNo.135

九州の人口重心

Q4:佐賀県の人口の重心はどちらに動いた?

答え:佐賀県の人口重心は東へ移動

佐賀市内の地区別人口推移

佐賀市の人口分布の変化(北部の山間部を除く)

佐賀市の人口分布の変化(北部の山間部を除く)

佐賀市の人口集中地区(DID)の変化

佐賀市の人口集中地区(DID)の変化

  • DIDとは、人口密度が高い地域(人口密度4,000人/㎢以上の地域が連なって人口5,000人以上となる地域)のこと。

  • 佐賀市のDIDの広さ:1960年の約3.7倍

  • 佐賀市のDIDの人口密度:1960年の約半分

年 DID人口(人) DID面積(km²) 1km²あたり人口(人) 面積(1960年=1) 1960年と比べた密度
1960 73,937 7.7 9,602 1.0倍 —
1980 109,660 18.1 6,059 2.4倍 37%減
2000 137,668 25.7 5,357 3.3倍 44%減
2020 139,060 28.4 4,903 3.7倍 49%減

小休憩

毎日の移動

Q5:普段、病院へはどうやって行きますか?

  • 自分で運転
  • 家族の送迎
  • バス・タクシー
  • 徒歩・自転車

高齢者の分布と医療機関から500m圏内

高齢者の分布とバス停から300m圏内

運転をやめた後の選択肢

  • バス
    • まわりに住む人が少なくなると、路線の維持が難しくなる
  • 家族の送迎
    • 家族が近くに住んでいない場合は難しい
  • タクシー・デマンド交通
    • 需要に応じた運行で、バスよりも柔軟に対応できる
  • 徒歩
    • 近くに病院や薬局があれば、移動手段として有効
  • オンライン診療・オンライン服薬指導
    • 自宅にいながら診察、薬の受け取りが可能

佐賀市の取り組み

コンパクト・プラス・ネットワークのまちづくり

(出所)国土交通省(2025)「立地適正化計画の手引き【基本編】(令和7年4月版)」

立地適正化計画の策定

(出所)佐賀市(2024)「佐賀市立地適正化計画」

公共交通の取り組み(鍋島地区のオンデマンド交通)

(出所)佐賀市ウェブサイト

これから

Q7:10年後、どうやって病院や買い物に行けたらよいと思いますか?

  • 10年後、どんな暮らしをしていたいですか?
  • 10年後、どうやって病院や買い物に行けたらよいと思いますか?
  • 10年後、どんなまちになっていたらよいと思いますか?
  • 2分くらい考えてみてください
    • 隣の方と話し合ってみてもいいと思います

まとめ:2つの「移動」から見えたこと

  • 一生の移動:佐賀の人口は1955年頃が最も多かった
    • 進学・就職で、若い人が福岡や東京へ
    • 佐賀は福岡とのつながりの中にある(人口の重心も東へ)
  • まちの広がり:佐賀市の中で、住む場所が外へ広がった
    • 中心部の人口が減り、兵庫や大和などの郊外で人口が増えた
    • 市街地は60年で約3.7倍に広がり、住む人の密度は約半分に
  • 毎日の移動:住む人がまばらになると、バスや医療機関を支えにくくなる
    • 車を運転しなくなったときの選択肢を、今から知っておく
    • まちなかに暮らしの機能を集める取り組みも始まっている

人の移動がまちのかたちを変え、まちのかたちが毎日の移動を変える