なぜRを学ぶのか
結論
Rを学ぶ目的は、プログラミングそのものを身につけることではありません。 データを使って経済理論を自分の手で検証し、その過程を説明できる力を身につけることが目的です。
そのためには、分析の手順や判断を明示的に残せることが重要です。 Rは、分析手順をコードとして記録し、後から確認・再利用できるという点で、この目的に非常に適した道具だと考えています。
経済学とR
Rは経済学のために開発されたものではありません。 それではなぜ経済学部の私たちはRを学ぶのでしょうか?
経済学では、
- 人の行動を仮定し(理論モデル)
- その仮定が現実と合っているかをデータから確かめる(実証分析)
という2つの作業を繰り返します。
この「実証分析」において特に重要なのは、データをどのように処理し、どのような手順で分析したのかが明示されていることです。
Rを用いると、実証分析の過程をすべてコードとして残すことができます。 クリック操作が中心となる(Excelなどの)ソフトと比べたとき、ここが決定的な違いです。
分析手順がコードとして残ることで、
- 仮定を変えて再計算することが容易になる(再利用可能性)
- 他人が計算過程を確認できる(研究の透明性)
というメリットを享受できます。 これらの性質はまとめて再現可能性と呼ばれることがあります。
再現可能性は、経済学だけでなくそれ以外の分野の研究においても、近年ますます重視されている概念です。
Rのエコシステム
Rは、経済学の研究と非常に親和性の高い言語の1つです。 その理由として、「豊富なパッケージ」と「最新手法へのアクセスの速さ」が挙げられます。
経済学に特化した拡張機能
CRAN(Rの公式パッケージ集)には、経済学向けのパッケージが数多く公開されています。 因果推論、パネルデータ分析、時系列分析といった手法も、比較的少ないコードで実装することが可能です。
これにより、教科書で学ぶ理論や手法を、実際のデータを使ってすぐに試すことができます。
最新手法へのアクセス
世界中の経済学者が論文で提案した新しい分析手法は、オープンソースのRパッケージとして共有されることが一般的になっています。 その結果、大学の講義で扱う標準的な手法にとどまらず、最先端の研究成果に直接触れることも可能になります。
キャリアにおける強力な武器
データに基づく意思決定が求められる現代において、Rのスキルは文系・理系の枠を超えた強みになります。
Rを学ぶことは、特定の専門職を目指す場合に限らず、幅広い分野での「価値」向上につながります。 エコノミストやデータサイエンティスト、金融分野の専門職だけでなく、銀行、証券、商社、IT、公務など、さまざまな分野で、データを論理的に読み解き、根拠をもって説明・提案する力として評価されるでしょう。
Rを学ぶ過程そのものの意義
Rのコードを書くことは、最初は難しく感じるかもしれません。 思い通りに動かないことも多く、エラーに戸惑うこともあるでしょう。 しかし、その試行錯誤の過程こそが重要です。 Rで分析を行う際には、
- 何を知りたいのかを明確にする
- 問題を小さなステップに分解する
- それぞれの手順を論理的に組み立てる
といった思考が自然と求められます。 これはRに特有の能力というよりも、プログラミング一般に共通する力であり、 同時に、経済学で重要とされる「論理的に考え、説明する力」とも深く結びついています。
最初はうまく書けなくても構いません。 少しずつコードを書き、動かし、修正する経験を積むことで、 「考えを手順に落とし込む力」が確実に身についていきます。