空間情報とは何か

更新日

2026年5月15日

GISとは何か

空間情報システムは、 Geospatial Information System あるいは Geographic Information System の日本語訳です。 いずれの英語も、その頭文字をとってGISと略称されます(後者は地理情報システムと呼ばれることも多いです)。

GISとは、空間情報(あるいは地理情報)を、コンピュータ上で作成・保存・利用・管理・表示するシステムのことです。 つまり、私たちの身の回りにある、建物や道路といった構造物、あるいは標高や地価などの場所に紐づく情報について、それらの位置関係をコンピュータ上に再現するシステムのことです。 したがって、Googleマップ地理院地図に代表されるデジタル地図(ウェブ地図)も、GISの一種だといえます。

地図とは何か

デジタル地図について考える前に、地図とは何かということについて、少し考えてみましょう。

私たちが暮らす地域には、様々な構造物があります。 ここに示す写真は、佐賀市中心部の航空写真ですが、道路や建物、水路や田畑などの状況が一目でわかります。

同じ地域の地図を見てみましょう。 次に示す図は、佐賀市の都市計画図からの抜粋ですが、道路・鉄道、河川といった都市の骨格、建築物の位置と密度がよくわかります。 また、航空写真からはわからない行政界や土地利用規制などの情報が色つきで書き加えられています。 逆に、写真からは読み取ることができる建築物の高さや屋根の色といった情報は地図に含まれていません。 このように、地図では、その目的に応じて、掲載される情報が取捨選択されていることがわかります。

また、現実世界の情報を、一定の大きさの紙の表示する必要がありますから、地図上に示される構造物等の大きさは実物に比べてかなり小さくなります(この実際の大きさに対する地図上の大きさの比率のことを縮尺といいます)。

地図をどうやって作るか

近代の地図作成

現代の地図作成

それでは、これらの地図はどのように作成されているのでしょうか。

伊能忠敬の時代はいざ知らず、現代ではコンピュータ上で処理した情報を元に、地図が出力されます。 その基盤となっているのは、物体の位置関係をコンピュータ上で表現するための技術です。 すなわち、座標、つまり複数の数字の組み合わせで位置関係を表す方法です。

具体的には、

  • \(x\)座標と\(y\)座標で平面上の1を特定することができます
  • 2つの点(2組の座標)を使って1つの線分を特定することができます
  • いくつか(3つ以上)の線を使って1つのを特定することができます

つまり、たくさんの座標を使うことで、地図を数値で表現することが可能になります。 この性質を利用することで、コンピューター上で地図を表現することが可能になっています。

先ほど示した都市計画図は、佐賀市が運営する『ぐるっとさがナビ』で(同じ情報を)閲覧することが可能です。

デジタル地図のメリット

地図をデジタル化することには以下に挙げるような多くのメリットがあります。

  • 管理(情報の更新)・保存が容易
  • 拡大・縮小表示ができる
  • 検索(施設探索・経路探索)ができる
  • 計測(距離や面積)・集計ができる
  • 情報の重ね合わせができる

紙の地図ではできなかったことが、デジタル地図を使うことで可能になりました。

空間情報システムとは何か

これまでの議論をまとめると、空間情報システムとは、

  • 緯度経度の数値座標データによって、
  • 地球上のあらゆる物体(地物ちぶつ)の位置情報をデジタル化することで、
  • 情報の検索や集計、重ね合わせを可能にしたもの。

といえそうです。 この定義によれば、皆さんが普段から利用しているGoogleマップなどのウェブ地図も空間情報システムですから、みなさんはすでに空間情報システムを使いこなしているといえます。

緯度経度とGPS

緯度と経度

GISにおいては、緯度と経度いう座標情報がとても大切であることがわかりました。 それでは次に、緯度と経度はどのように決まるのか、について学びましょう。

ところで私たちが今いる場所(佐賀大学本庄キャンパス)の緯度と経度は、おおよそ

  • 北緯33度14分39秒
  • 東経130度17分34秒

です。 これら数字はどのように決まっているのでしょうか。

実は地球上のすべての地点は、緯度と経度を使って一意に(ユニークに)表すことができます。

  • 経度は、イギリスのグリニッジを通る本初子午線を0度とし、東経と西経がそれぞれ0〜180度になるように定められます。
  • 緯度は、赤道を0度とし、北緯と南緯がそれぞれ0〜90度になるように定められます。

この唯一無二の座標である緯度と経度という数値を使って、地球上のどんな場所でも、コンピュータを使って表現することができるのです。

GPSとは

GPSという言葉を聞いたことがあると思います。 これはGlobal Positioning Systemの頭文字をとった略称で、日本語では「全地球測位システム」などと呼ばれたりします。

これは、数機の人工衛星(GPS衛星)からの信号をGPS受信機で受け取り、受信者が自身の現在位置を知るシステムのことです。

現在、数多くのGPS衛星が打ち上げられており、地球上のどの場所からでも、常に複数個の衛星からの信号を受け取ることができるようになっています。

例えば、皆さんが持っているスマートフォンは、GPS受信機としての機能も持っています。 スマホではGPS衛星からの信号を受信し、その信号の内容を使って、あなたが今いる場所の座標(緯度・経度)を計算しています。

GPS衛星から受け取る情報は、GPS衛星の位置と、GPS衛星から受信機(例えばあなたのスマホ)までの距離1です。 複数のGPS衛星からこれらの情報を受け取ることで、現在位置を正確に計算することが可能なのです。

原理的には、3機のGPS衛星の位置(座標)とそこからの距離がわかれば、現在地の座標を計算することができます。 ただし、受信機に搭載されている時計は、GPS衛星のそれと比べて精度が低いので、4機以上のGPS衛星からの信号を使うことで、受信機の時計を使わずに座標を計算しています。

iPhoneを持っている人はコンパスアプリを起動してみてください。 緯度と経度だけでなく、3次元の座標を計算しているので、おおよその高度もわかります。

地球の大きさを見積もる

エラトステネスによる方法

紀元前230年ごろエジプトで活躍した学者エラトステネスが、初めて地球の大きさを推定したと言われています。 そしてそれは、次のような方法によるものでした。

エラトステネスは、シエネでは夏至の日に太陽の光が井戸の底まで届くこと、つまり南中高度が 90°となることを知ります。 そこで彼は、同じ夏至の日に、シエネの北900 kmの地点にあるアレキサンドリアで夏至の日の南中高度を計測します。 その結果は、90°から南に7.2°ずれる、というものでした。

図からわかるように、シエネとアレキサンドリアの南中時の太陽高度の差は、2都市の緯度の差に一致します。 そこで、緯度差(7.2°)と距離(900 km)から、地球の周長を計算しました。 地球の周長を\(x\)とすると、以下の式が成り立ちます。

\[ \frac{7.2}{360} = \frac{900}{x} \]

これを\(x\)について解くことで、地球の周長を計算することができます。

\[ x = 900 \times \frac{360}{7.2} = 900 \times 50 = 45000 \]

エラトステネスは地球の周長をおよそ4万5千kmと推計したと考えられています。

地球の大きさを見積もろう

みなさんもエラトステネスのように地球の周長を見積もってみましょう。 ただし、使うのはスマートフォン(GPS受信機)と地図です。

以下の手順で、地球の周長を推定してみてください(詳しくは講義で配布するプリントを参照してください)。

  1. 本庄キャンパスの中で経度が等しい2地点を選び地図に記入
  2. 選んだ2地点の緯度・経度をスマホを利用し計測
  3. 選んだ2地点の間の距離を地図上で定規を使って計測
  4. 計測した緯度差と距離から地球の大きさ(全周)を計算

緯度経度は皆さんのスマートフォンで確認してください。 プリントに掲載されたQRコードからWebページにアクセスすると、以下のような画面が表示されます。

「緯度経度の誤差」が5 mに近いなら、かなり高い精度で計測できています。 空が広く見える場所(建物から離れた場所)の方が、精度よく計測できます。 スマートフォンを手で持っているよりも、地面などに置いたほうが、精度が上がるかもしれません(色々と工夫してみてください)。

エラトステネスよりも精度良く地球の全周を推計できましたか?

脚注

  1. 正確には信号が届くまでの時間。これに光速をかけることで距離がわかる。↩︎